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でぃふぇぜろにっき

弐寺に偏った日常の、ケイナさんと親友コンビに偏った記録な感じ。

2024'04.25.Thu
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2009'10.03.Sat
ネウロの電子ドラッグに感染したダルマ。

部屋の中、ダルマは一人、家庭科の指導要領を見ていた。
「食に関してが二ヶ月、まとめとして調理実習……その後二月かけて被服、その次は社会に関して」
次の調理実習までは、まだはるかに遠すぎる。
「まずはミシンを全て破壊。それから学校名義で小麦粉を大量に発注して……これだけじゃダメだな」
よし、と呟くと、ダルマはベッドから起きあがり、ケータイの短縮ボタンを押した。機械音が聞こえ、ツーコールしないうちに相手が出る。
「ケイナさん?」
『ダルちゃん! どないしたん?』
「あのさ、ケイナさん電子ドラッグの改造って出来るよね?」
問いかけではなく、確認の形で聞く。すぐにあっけらかんとした返事が返ってきた。
『できるで。どんなのがお望みで?』
「……先生が授業予定無視して調理実習したくなるようなやつ。周りの先生黙らせる方は俺でも作れるから」
『え、なに、ダルちゃんの願望ってそれなん?』
裏返った、変な声が聞こえる。電話口で、明らかにケイナは笑っていた。
『ツガちゃんの手作りケーキがまた食べたい、と。いや~、青春やなー』
「ケイナさんうるさい」
軽く覚悟はしていたとはいえ、笑われるのはやっぱり気分のいいものではなくて、ダルマは憮然とする。
『おっけーおっけー。……くくっ、ぃやーもー可愛いなぁ……』
「……ケイナ」
『はいはいごめんて。あ、せやったら今から、PDAのほうに映像送るから、ちょっと確認したってくれない?』
「あ、うん」
ごそごそとバッグを探って、ケイナのお下がりのPDAを探し出す。パスワードを入れて起動してみれば、すぐに添付ファイル付きのメールが送られてきた。
「ん、来てる」
慣れた手つきで映像を開く。
警戒する必要などどこにもない。電子ドラッグによって構成されたもう一つの本能が告げている。ケイナは、仲間だ。
だから、その映像が再生されたとき、ダルマは呻き声も、驚愕も、何一つ抑えられなかった。
「ケイナさ、なんで……」
PDAの画面いっぱいに再生されるワクチンソフトから目を離せずに、ダルマはただ呟いた。
「電子ドラッグで、洗脳されたはずじゃ……!」
『せやな。確かに俺はそれを見たし、今も増幅された願望に則って行動しとるよ』
「じゃぁ、なんで……!」
ケイナの声は落ち着いている。そして、それが少し笑いを孕んだ。
『俺の願望はな、幸せすぎる今を永遠に続けることや。そのためなら、どんなマイナスの変化も否定したるよ』
「……ははっ」
ケイナの言葉を理解して、ダルマは笑った。なるほど、それでは確かに彼は仲間が犯罪者になるのを望まないだろう。これが終わったら、自分自信に対してワクチンプログラムを用いることすらあるかもしれない。
「……ケイナさん、らしいや……」
ぐるぐると、頭の中がかき回される感覚。不自然に作られていた回路がほどけ、元へと戻っていく感覚。
ケータイが手から滑り落ちる。過負荷に耐えた脳が、今は眠りを必要としていた。
慣性に従ってベッドの上へ倒れ込み、ダルマは笑って目を閉じた。
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