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でぃふぇぜろにっき

弐寺に偏った日常の、ケイナさんと親友コンビに偏った記録な感じ。

2024'05.15.Wed
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2008'06.06.Fri
自分設定パラサイトワールドの序章。一年前に9割方書き上げていたのですが最後が決まらず放置していたブツ。
主役は達磨? なケダルツガ出会い編。
暴力描写注意。

走っていた。ただひたすらに走っていた。
口で大きく息をし、流れる汗をぬぐいもせず、達磨はがむしゃらに路地裏を駆ける。
さっきの角は右だった。ならば今度は左側へ!
曲がった拍子に、背負ったツガルの身体がずり落ちかける。慌ててその腕を掴み直し、伝わる冷たさに達磨はぞっとした。
死。その言葉が頭に取り憑き、必死で打ち消した。違う、走り続けた自分の身体が熱いだけだ!!
青いポリバケツ、暗い水たまり、高い壁。
見知らぬ路地裏の景色はどれも同じようなもので、自分が今どこにいるのかもわからない。
それでも良かった。ただ、あいつらから逃げることが出来れば。
遠くへ。一メートルでも、一歩でもいいから遠くへ。
肺が痛んでも、脇腹が悲鳴を上げても、心臓なんて破れてもいいから遠くへ、遠くへ、遠くへ!!

だが、その逃避行はあっけなく終わりを告げた。
「ったく、手間かけさせやがって」
曲がったその先の道をふさぐように、あいつらの一人が立っていた。



始まりはいつものちょっとした冒険だった。
寮生の点呼が終わり、消灯(もしくは勉強)を命じられる午後十一時。早々にベッドに入るよい子の振りをして、達磨と津軽はそれぞれに寮を抜け出した。待ち合わせ場所の公園を経由し、夜の街へと向かう。
今日の行き先はゲーセンではなく、いつものクラブ。やる気のないIDチェックをチャチな偽造の学生証で誤魔化し、フロアに滑り込んで熱気と音の洪水に身を任せる。アルコールはまだ少し怖いからソフトドリンクを貰うけれど、それだって楽しむには十分だ。そんな、今までだって何度も成功してきた、今度も成功するはずの、本当にちょっとした冒険の筈だったのだ。
それなのに、今日は。
ジンジャーエールとコーラをオーダーして、受け取って、飲み干して。
また踊りに行こうと笑ったとたん、ツガルが、倒れた。
「ツガルっ!?」
「なんだよ彼女具合悪いみたいじゃん」
「奥のソファーで休ませてやったほうよくない?」
ツガルに飲み物を渡した店員と、周りにいた男達が次々と話しかけてくる。だがその表情はにやにやと歪み、その声は意地悪い愉悦を含んでいた。
その瞬間、達磨は認識し、理解した。
こいつらは、敵だ。
「ぅ……だる……ま……?」
津軽がかすれた声で、自分を呼ぶ。
頭で考えるより早く、身体が動いた。
「っ!!」
「うわぁっ!」
氷の残ったままのグラスを男に投げつける。津軽の腕を引っぱり、その勢いで背中に乗せる。一度腰を落として引きずりあげ、鋭く息を吐いて走り出した。
「あのガキっ、逃げやがった!!」
「ぁんなろ、なめやがって! 殺してやる!」
背後から罵声と悲鳴。叩きつけるような足音が追ってくる。
土地勘はない。大人と子供、足の速さは比べるべくもないし、こちらは津軽を背負っている。逃げ切れる可能性なんて、万に一つもあるはずがなかった。
それでも、達磨は走った。あいつらから津軽と自分を守るために。億に一つの可能性に賭けた。



そして今、達磨はその賭けに負けた。
「はぁっ、つっ……!」
立ち止まった拍子に重心が崩れる。津軽ごと地面に叩きつけられそうになって、なんとか立て直したつもりがこらえきれず、地面に膝をついた。途端に足が自分の物でないように重くなり、じんじんと痛み出す。
「ったく手間かけさせやがって……」
目の前の男は、言いながら指をぼきぼきと鳴らす。逃げ道はないかと達磨は視線を動かしたが、いつの間にかあいつらに囲まれていた。せめてもの抵抗に、背後の津軽をかばうように手を広げる。
「おーおー、ガキがかっこつけやがって」
だがそれは、男の怒りを煽ることにしかならなかった。大きく揺らされた男の足が、何のためらいもなく達磨の腹にめり込む。
「がっ……くっ、かはっ……!」
一瞬呼吸が止まり、なすすべもなく達磨は痛みに倒れた。呻き声を聞き、男達がげらげらと笑う。
「じゃぁそのケナゲなアイジョーに免じて、お前にもカノジョが犯されるとこ見物させてやるよ」
「よかったなー潰されるの片目だけになるぞ」
再び笑い声。
「うわぁぁあああぁああ!!」
男達が何を言っているのかを理解して、達磨は渾身の力で暴れた。怖かったし、嫌だったし、守りたかった。
「うっせーんだよガキ」
だがその抵抗も、圧倒的な暴力の前では無意味だった。腹部に再びの衝撃。目の前が一瞬暗くなるのを確かに感じた。
「ガキはガキらしくなぁっ、大人しく遊ばれてりゃいいんだよ!!」
男はまだ怒鳴り散らしているが、今の達磨にそれを理解する余力はない。
「ったく! 舐めやがって! ガキのくせに……ぁがあっ!?」
永遠に続くかと思われたその罵声は、悲鳴と共に突然途絶えた。
「……?」
どうにか目の焦点を合わせ、男のほうを見た達磨は、信じられない物を目にした。
男は、何かに首を絞められているようだった。目の錯覚のようにも見える黒くぼんやりとした何かが男の首に絡み付き、男はそれを取り外そうと必死で喉をかきむしっている。
そして、もがき、痙攣する男の足は、確かに地面から離れ、宙に浮いていた。
「……ぁ…………」
達磨も男の仲間達も、誰一人事態を理解できず、身動きも出来ないうちに、男は動きを止め、どさりと地面に落ちる。
「聞いてりゃ勝手なことばかり言うてくれるやないか」
それと同時に姿を現したのは、二人の青年だった。
一人は銀髪を逆立て、手にはコンビニ袋を下げている。もう一人は長身で、金髪をモヒカンにしていた。
「ガキガキって連呼して、自分は子供に威張り散らすことしかできませんって言っとるようなもんやないか。なんや胸糞悪い」
そう言って辺りを見回した銀髪の青年の目が、達磨たちを捉えた。
「そんでその子ら虐めてたん?」
その目がスッと細まる。
「最低やな自分」
次の瞬間、達磨には何が起こったのかわからなかった。
ひどい寒気が背筋を走ったかと思うと、男達の身体がズブズブとアスファルトに沈みはじめる。そして、男達の首と、アスファルトに埋まった足下から、テレビの砂嵐のような何かが広がりはじめた。呆然とする達磨をよそに、それは男達の身体を覆い尽くし、そして、弾けた。
「っ……」
思わず目をつぶる。それはほんの一瞬の筈だったが、次に目を開けたとき、男達はただ倒れているだけだった。アスファルトに穴はなく、あの砂嵐のような何かの名残もない。
「ケイナ、やりすぎだろ」
モヒカンの青年が戸惑ったような声を出す。
「殺してへん。悪夢から出られなくしただけや。自業自得やろ、じぶんの悪意なんやから」
ケイナと呼ばれた青年は言い捨てると、まっすぐに達磨達のほうに向かって歩いてきた。
「だいじょぶ? なにされたんや?」
ケイナはしゃがみ込み、ただただ呆然としていた達磨に向かって声をかける。その瞬間達磨はやっと我に返った。
「津軽が……!」
言いかけて咳き込む。ケイナが慌てて背中をさすってくれた。
「津軽が、倒れたんだっ! あいつら、ジンジャーエールに何か入れて、それで、きっとっ」
「わかった! ジルチ、そいつらの荷物探せや」
モヒカンの青年に鋭く指示を飛ばすと、ケイナは津軽の身体をそっと抱き上げ、脈を取り瞳孔を確認する。素早く頼もしいその手つきを、達磨はすがるような気持ちで見つめていた。
「ケイナ! あったぞ」
ジルチが大きく手を振って何かを投げてくる。それは空中、何もないところで唐突に止まり、ケイナの手の中に落ちてきたように見えた。ありえない光景の連続について行けない達磨をよそに、手の中の物を見てケイナは一人頷く。
「ん、やっぱありきたり、クーロンにミルヒのカクテルやな。安心しぃ、この子なら普通に一晩もすれば目ぇ覚ますで」
「ほんとっ!?」
混乱しきって呆然としていた達磨の耳に、最後の言葉だけは鮮烈に飛び込んできた。思わずケイナに掴み掛かるかのように聞き返してしまう。
「安心し。この薬のことならよぉ知っとるんや」
そう言うとケイナは達磨の頭を撫でるように軽く触れて、ニヤリと笑った。
「何てったって、この薬作ったのは俺やからな」
「……え?」
反射的に、ぞわり、と背筋が粟立つ。
だが、ケイナの言葉の意味を理解しきるより早く、パチンと言う音が聞こえて、達磨の意識は暗転した。



「……おいこら、ケイナ」
倒れ伏した二人の子供と、久しぶりに暴れて上機嫌なケイナを見て、ジルチは嘆息した。
「重要機密をんな簡単にばらすなよ……」
「えー、だってこのタイミングのほうが絶対かっこいいやん」
「殴るぞお前」
ケイナは全く悪びれた様子もなく、鼻歌まで歌いながら現場を偽装している。どうやら乱闘でもあったように仕立てたいらしい。ジルチは諦めて、津軽を抱きかかえたまま達磨を背負った。二人は流石にきついから、津軽のほうは後でケイナに任せようと思う。
「んで、どうすんだこの後。どっかホテルにでも放り込むのか?」
どっからどう見ても怪しい男が二人に、ぐったりした子供が二人。歩いているだけで通報されそうだが放っておくわけにはいかないだろう。そう考えて訊ねると、ケイナは首を振った。
「うんにゃ、連れて帰るよ。そのために気絶させたんやし」
「……こらまてケイナ。お前正気か? いや、狂ってるのは知ってるがよ、」
機密情報だらけの部屋に一般人を入れるわけには行かないだろうと、言いかけた文句はケイナに遮られた。
「こっちの子、多分覚醒しとるで。素質は十分だったみたいやな」
「……なるほどな」
どうせ巻き込まれるのなら、早いうちにこちらの手の中へ引きずり込んでしまえばいいと言うことか。
不幸な子供達に軽く同情しながら、ジルチはケイナの後を追って歩き出した。



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補足説明
・ケイナはドラッグデザイナー、ジルチはそのボディーガードです。二人ともユーズの部下。
・ケイナが使った能力は、寄生物(自分設定では『獣』と呼ばれてます)によるもの。
・『獣』が見えたり使えたりする能力は、生まれつき(彩葉や慧靂)だったり、頭ぶつけたせいで生じたり(鉄火)、薬物の影響で生じたり。
・その能力が使える人を増やすのがユーズサイドの目的です。
・クーロンはcool-onという市販のミントタブレットの箱に入って流通してるアッパー系の薬、ミルヒはダウナー系、二つ混ぜると何故か即効性の睡眠薬になるというご都合主義設定。

作中で書ければよいのだけれど続きを書くかがわからないのでばしばし補足。


ドラッグもある種ウイルスだと思うのですよ。宿主の存在無しには増えられず、宿主に悪影響を及ぼす。
人に寄生するドラッグと、ネットワークに寄生するコンピューターウイルスの共通性をうだうだ考えてた結果こうなったような気もするけれど最終的には化学者ケイナさん萌えるからってことでいいです。

あと達磨が酷い目に遭っててごめんなさい。最初暴れる予定だったジルチさん出番なくなっちゃってごめんなさい。最近の不良の口調がわからなくて昔風でごめんなさい。


あとでまた付け足すやも。
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